2017年11月17日金曜日

公募展 著作権のこと

菱田春草の「落葉」の虫食いの葉の日本画が好きです。
気になったので下記のようにメールをしました。


豊橋美術博物館5回トリエンナーレ豊橋

星野眞吾賞展明日の日本画を求めて

優秀賞 AM(神奈川県川崎市)落葉の作品は、

明治時代の画家菱田春草の作品と構図が全く同じです。

公募展に応募する場合どこまで許されるのでしょうか

参考のためおききしたいです。と質問した後 

丁寧な対応回答を頂きました。


菱田春草

質問した作品

回答
星野眞吾賞展 A.Mさんの作品について

「トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展」を担当しております
豊橋市美術博物館学芸員のO.Nと申します。

お問合せをいただきましたA.M氏の「落葉」は、
たしかに菱田春草の「落葉」の構図を引用した作品ですが、
著作権はすでに消滅しており、法的な問題は発生しません。
(日本では没後50年間著作権が保護されますが、春草は1961
で切れました)

構図や色彩、技法、主題すべてが同じ場合は“模写”であり、
仮にコンクールに自作として出品すれば盗作となりますが、
浅葉氏は独自の主題(テーマ)のために引用を行っており、
主題も技法も春草とは異なっています。
(ちなみに福田美蘭氏も古典を引用した作品を制作されています)

「公募展に応募する場合どこまで許されるのか」という
お問合せですが、「引用して新たに何を表現したいのか」が
最も重要なことだと思われます。そうでなければただの真似に
しかなりません。

ご参考までに、浅葉氏「落葉」に対する審査員評を下記に掲載
いたします。(図録掲載の審査評より抜粋)
ご理解いただければ幸いです。

   

◎審査員長 吉田俊英(豊田市美術館館長)
「菱田春草の名作を今日の感覚から組み立てなおし、新たな作品にしたもの。
作者はこの手法を長年続けているが、今展出品作が最も完成度が高かった」

◎審査員 菊屋吉生(山口大学教授・元山口県立美術館学芸課長)
「実に軽妙で機知に富んだ作品です。一貫して追い求めてきた菱田春草作品の
換骨奪胎スタイルが、最も成功したものだと思います」

◎審査員 野地耕一郎(泉屋博古館分館学芸課長・元山種美術館学芸員)
「よく知られた近代日本画名作のパクリだが、細部をデザイン的な要素に
還元して演色性を増した構成の周到さが、原作とは異なる親密で乾いた空間に
返還され、それが別のある物語へと見る者を誘う気持ちよさがある。
画面を眼近に見ると、岩絵具の粒立ちの触覚性をもつ一方で丹念な筆致が
意外に写実的なニュアンスがあったのも見逃せないものだった」




菱田春草は、

明治時代に生きた日本画家である。

明治維新という劇的に時代が変貌する中で、伝統的な日本の

文化は、西洋文化の激流に呑み込まれていった。

日本古来の価値観の転倒、矛盾や混乱は、鋭敏な人であれば

あるほど、苦しい日常であっただろう。

洋画の導入により、狩野派や土佐派などの伝統絵画は、日本

となった。

日本の近代美術が多くの作家の苦闘の上に築きあげられた

といわれるが、その日本美術の革進者の一人が、

春草である。




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